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- What’s B.PREMIER ─Bプレミアを知る─ 水野社長インタビュー
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2024年12月、厳しい参入基準を突破し、2026-27シーズンに開幕する新たなトップリーグ「B.PREMIER(Bプレミア)」入りを決めた秋田ノーザンハピネッツ。
Bプレミア参入後の展開とそこで秋田ノーザンハピネッツはどのように変わっていくのか。
秋田の明るい未来への思いも込めて、水野勇気社長にお話を伺った。
インタビュアー/木杉優介さん
ーーーまずは新リーグ「Bプレミア」について教えてください。
Bリーグが始まった2016年から、新しいリーグをどうしていくかという議論がリーグと各クラブの間で始まっていました。どういう形にすると日本のバスケットボールが盛り上がるのか、Bリーグが活性化するのか議論を重ねた結果、全クラブの合意のもと「B革新」と呼ばれる大規模なリーグ改革を行うことになりました。
この改革により2026年から新たに発足するトップリーグがBプレミアです。その下に、現在のB2に当たるB.ONE(Bワン)、B3に当たるB.NEXT(Bネクスト)と続きます。
秋田ノーザンハピネッツも昨年末に最終4次審査に合格してBプレミアへの参入ライセンスを取得しました。最終的にBプレミア入りを決めたのは計26クラブ。現在(B1)の24クラブよりもさらに多くなります。
リーグ全体を盛り上げ面白くしていくためにこれまでになかった制度なども導入されるのですが、今回の変革により変わるルールの中で、大きなポイントがいくつかあると僕は思っています。
ひとつ目は、サラリーキャップ制度の導入です。
ーーーサラリーキャップ制度とはどういった制度ですか?
全チームの戦力均衡化を図るため、1チームあたりのチーム人件費をあらかじめ決めてしまう制度です。
現在のBリーグ各クラブの昨年2023-24シーズンのチーム人件費というのは、リーグで公表しています。厳密に言うと、チーム人件費には、コーチやチームスタッフのサラリーも入っている。
今のBリーグは完全に自由競争で、資金力のあるクラブはいくら使ってもいいんですが、サラリーキャップ制度では使える金額に下限と上限が設けられています。
最低限必ず使わなければいけない下限(フロア)の金額が5億円、上限(キャップ)が8億円。その中でチームを作っていくことになります。
ーーー資金力があるクラブはたくさん使っていいという考えが無くなり均一化されますね。そうなると、どんな変化が生まれるんですか?
リーグ全体の戦力が均衡化し、どのチームにも優勝のチャンスが生まれます。リーグとしても、全試合大接戦、いわゆる面白い試合を作っていくことを目指しています。
今のBリーグは弱肉強食で、資金力のあるチームが強いです。ここ4、5年チャンピオンシップ(以下CS)に出ているのは予算の多いチームで、秋田ノーザンハピネッツがCSに出た時の予算は当時の上位チームの半分ほどでした。サラリーキャップ制度の導入により戦力が均衡化すれば、色々なチームがCSに出られるようになると思います。
このサラリーキャップ制度の導入は、ヨーロッパ型のリーグ構造からアメリカ型のリーグ構造への変化でもあります。
ヨーロッパ型はサッカーのスペインリーグが一番わかりやすいんですが、この10年間、リーグ戦で優勝したクラブはFCバルセロナかレアル・マドリード。他のクラブと何が違うかというと、予算が違う。
今のBリーグと同様、弱肉強食の世界です。
BプレミアはNBAやメジャーリーグなどのようなアメリカ型になります。
NBAも最近は連覇するチームがほぼないですし、3連覇以上なんて全然ない。メジャーリーグもここのところずっとそうです。ドジャースとヤンキースが去年ワールドシリーズに行きましたが、この対戦カードが実現したのは30数年ぶりだそうです。サラリーキャップ制度があるからこそ、どこが優勝するかわからない。
実は、Bリーグ以前に秋田ノーザンハピネッツが参入していたbjリーグはサラリーキャップ制度でした。秋田も優勝争いができていましたし、この制度が導入されることで今以上に優勝のチャンスが生まれてくると思っています。
同時に、スター選手条項という、一人の選手に限りどんなに金額を使っても1.5億円として計上して良いというルールも導入されます。
例えば3億円を一人の選手に使ったとしても、その一人だけは1.5億円として計上できるので、厳密に言うと8億円以上使うクラブが出てくる可能性はある。ですが、それも一人だけです。おそらく戦力は分散されます。
ーーースター選手条項は各チーム一人だけということで、そこでも均衡化するんですね。
そうですね。今の秋田ノーザンハピネッツと上位チームのアルバルク東京さんのチーム人件費には約3倍の差があり、リーグ内での予算差も最大で約4倍あります。それが、プラスαはあるものの5億円から8億円。戦力は間違いなく均衡するかと思います。
秋田ノーザンハピネッツもまだまだクラブとして成長していく必要があるので、まずは5億円という金額をしっかりと使い、いずれさらに使えるようになっていきたいと思っています。
ーーー同じような条件で戦える環境が整いますね。2つ目はどういった制度ですか?
ドラフト制度です。これも結構面白いことが起こると思います。
リーグ開始2シーズン目まではNBAのように指名順位を抽選で決めるロッタリー制度ですが、2シーズン目以降は、下位のチームから順番に獲得希望選手を指名できるようになります。つまり、最下位チームが一番最初に選手を指名して交渉する権利を得られる。
例えばその時代ですごく有望なスター選手、最近だと河村勇輝選手をドラフト指名できるチャンスが出てくる。スター選手が入ることによって戦力アップや話題性に繋がり、そういう形でリーグが活性化していく。それがドラフト制度の面白さじゃないかな。
ーーーいわゆる強豪クラブの主力選手が「もしかすると秋田にも来るかもしれない」「あまり成績が振るわないチームに所属して盛り上げてくれるかもしれない」といったワクワク感もありますね。
同時にオンザコート(1試合に出場できる外国籍選手の人数制限)のルールも変わり、今は2人が出場できるのに対し、Bプレミアでは3人が出場できるようになります。
各クラブ外国籍選手をどう揃えていくのか、帰化アジア選手を含めてどうチーム編成していくのかなど、各クラブの特色が出てくると思います。
ーーー選手の登録制度についても変わるところがあると伺っています。
これは若い選手の育成に関する制度です。
例えばU18出身の選手が18歳でプロ契約をしたとしても、すぐに試合に出られる選手は非常に限られていると思います。そういった若い選手が実戦を経験できるよう、BワンやBネクストのカテゴリーに期限付きで移籍できるようにし、試合経験を積ませていこうというものです。
現在は一度移籍するとそのシーズンは同じチームに戻ることができませんが、新しい制度では自由にできるようになり、若手選手が経験を積む機会が増えるようになります。
ーーー秋田でいうと中山拓哉選手が特別指定から入り、今ではチームの主力です。そのようなことが起こり得ると。
彼の場合は大学を卒業してからでしたが、当時の秋田ノーザンハピネッツはB2に所属していて、その時の経験は今も活きているかもしれないですね。
そういう意味で言うと、恐らく今後は18歳ぐらいの選手もBリーグ全体で増えてくるでしょう。ユース出身の選手がいたり、大卒の選手がいたり。
どんどん活躍のプロセスが広げられるいい制度だと思います。
ーーーたくさんの変化が起こるBプレミアですが、開幕は今から約2年後。ブースターの皆さんの中には「私たちは何をすればいいの?」「今まで通りバスケを楽しんでいるだけでいいの?」と迷っている方もいらっしゃると聞くのですが、その辺りはいかがですか?
実は、今から大体1年後の2026年1月には1回目のドラフト会議が行われる予定です。
新リーグ開幕前のため、初回と2回目のドラフトの指名順位は抽選で決まります。どのチームも平等に指名順位が取れる確率があって、多分これは運です。抽選の順番をどう決めるかもまだ分からないけど、恐らく全クラブでアナログな抽選なんじゃないかな。
「秋田は何番目かな?」といったドキドキ感も楽しめると思います。サラリーキャップ制度の導入により選手の流動性は高まるでしょうし、この約1年間で各チームがどう動いていくかを見守るのも面白いと思います。
Bプレミア開幕後になりますが、2028年には新しいアリーナも完成します。
チーム立ち上げ当初から「秋田にアリーナを」という目標を掲げて活動してきた僕たちにとっては悲願でしたし、新アリーナの誕生は非常にワクワクする話だと思います。
ーーー2028年に完成する新アリーナについては、どういったビジョンをお考えですか?
なぜ僕たちが設立当初からアリーナを目標に掲げてきたかと言うと、お客様が本当の意味で楽しめるのがアリーナだと思っているからです。
現在メイン会場としている体育館は、基本的には「スポーツをする人」に適した施設。皆様に楽しんでいただけるよう僕たちも工夫をしているのですが、どうしても限界があります。アリーナは「観戦する人」に適した施設です。この目的の違いは大きいと思っています。
最近は日本全国でBリーグ所属クラブのアリーナができ始めましたが、やっぱり試合が非常に楽しく、雰囲気もいいですよね。そのようなアリーナが秋田にも実現すると思います。
真の意味でスポーツエンターテインメントを楽しんで頂ける空間にしていきますので、2028年を楽しみに待っていてほしいなと思います。
ーーー2028年に最高な景色を見るために、今からブースターの皆さんが準備しておくべきことや、水野社長からブースターの皆さんへお願いしたいことなどはありますか?
コロナ前の環境に戻ってきている今、やっぱり「声」をお願いしたい。
当然、僕たちチームも頑張らなければいけないと思っています。チームが勝ち星を重ねていくと応援してくれる方にも熱が入る。秋田ノーザンハピネッツは日本一熱気のある会場を目指して活動してきているので、やっぱりブースターの皆さんの熱い声援は必要です。
遠慮なくどんどん声を出して応援してもらいたいなと思います。
ーーー僕もその皆さんに声を出してもらえるように、頑張って元気良くMCをしていきます。最後に水野社長の方からメッセージをお願いします。
Bプレミア参入を無事に決めることができました。試合会場へ足を運んでいただき、本当にたくさんの応援をありがとうございました。
いよいよ秋田ノーザンハピネッツも2026年から、新たなトップリーグであるBプレミアで戦っていきます。
優勝を目指してクラブ一丸となって頑張っていきたいと思いますので、ぜひ引き続き熱い応援、ご声援をいただきたいと思っています。どうかよろしくお願いします。
ーーー秋田のスポーツマガジンタイトルプレゼンツ「Bプレミアと秋田ノーザンハピネッツ」と題して水野勇気社長にお話を伺いました。ありがとうございました。