地元秋田の応援の中でプレーしたい
アランマーレ秋田髙野選手インタビュー

2023.07.25

野球をやりたくないから入ったバスケ部

始まりは父親への反発からだった。
「父が野球のコーチをやっていて、姉妹なんですけど野球をやらせたいって願望が強かったんです。でも私はやりたくなくて。だから、野球やるならバスケやる！って」
それまでバスケットボールを触ったこともないし、観戦をしたこともない。小学３年生の「その時の勢い」と振り返るが、それはまさにバスケット人生への扉を開けた瞬間だった。

進路選択は自分の気持ちを一番に

バスケで勝つことの楽しさを知ったのは中学時代だった。中学でのチームメイトは小学校からの同じメンバー。無名のチームだったが中学で飛躍的に成長し、全国大会にまで出場できた。その時の勝利の喜びは、もっとバスケを続けたい、もっと高いレベルでやってみたいという思いに繋がった。
高校は宮城県の強豪校聖和学園高に進学している。県外進学を選んだのは「他の人とは違うことがしたい」と思ったから。「秋田に育ててもらったのに」と両親からは反対されたが、違う環境に行きたい想いが強く、何度も話し合いをしたそうだ。結果的に、その県外進学は大きな収穫になったと髙野選手は言う。
「自分のことを全く知らない土地で、知らない人たちから評価してもらえるのは嬉しかった。県選抜で戦った他県の選手とチームメイトになったり、他のスポーツの選手と一緒に生活をするという環境はすごく良かった」と振り返る。
そして、インカレ（全日本大学バスケットボール選手権大会）６連覇を果たした強豪校、東京医療保健大学に進学した高野選手。ずっとうまくいっていたバスケット人生で、大きな挫折を経験したのはこの時だった。
「トッププレーヤーが集結している中で、その壁を乗り越えるのに苦労した。いろんな持ち味の選手がいる中で、どう自分を表現していくか、自分の取り柄をどう発揮するかというところがすごく難しかった」
そんな中でも続けることができたのは、「自分で決めたこと」だから。
「親に決められたことだったら諦めてたかもしれない。でも反対押し切ってまで東京に来て、辞めたら『ほら』って言われる。そう言われたくないから頑張った部分もあります」

自分に自分でプレッシャーをかけてしまった昨シーズン

もがきつつも掴み取った、Wリーグでプレーをするという人生。これまで必死に取り組んできたからこそ少なからず自信もあった。
「でもうまくいかなかったことも多くて。自分で自分に期待しすぎて、できなかった時の跳ね返りの多い悩める1年だったんです」
秋田出身の選手だからこそのプレッシャーもあった。
「秋田の方の期待がすごく大きいんですよね。熱心な方が多いし、いろんなところで記事にしてくださったり、取材にしていただいたり。嬉しいんです。でもそんな中で、『頑張ります』って言ってる自分自身にプレッシャーを感じてしまって…。期待に応えなきゃって気持ちが強い１年だったなと思います」
そんな戸惑いや葛藤も、まずは自分で考える。大学時代にメンタル強化や自己達成力などの思考法の勉強もしてきたことが今も活きていて、「次にどうする？」を考えるため、本を読んでみたり上手い人のプレーを見て研究したり、自問自答する日々だそうだ。

大好きなおしゃれで気分転換

とはいえ、考え込んでしまわないように気分転換も大切にしている。「普段はジャージ姿の時間が長いから！」と笑いながら、大好きな洋服や香水の話をしてくれた。日常から離れる感覚が好きで、オフの日は好きなコーディネートを楽しんだり、香水の匂いを変えてみたりする。同期の髙橋選手ともよく出かけるそうで、そういうオフの時、バスケットのことは、ほんの少しだけ頭の片隅にあるそうだ。

地元秋田の応援の中で自分もプレーがしたい

昨シーズンの心残りはホーム戦で活躍できなかったこと。両親やかつてのチームメイトが観戦に来てくれたが、自分の思うようなプレーができなかった。良いところを見せたいと、今季はホーム戦での活躍を誓う。地元秋田に帰ってきた理由もこのホーム戦にある。
「秋田の方々の応援の力ってすごいんです。あの声援を受けてプレーできる選手は幸せだなって思います。自分もその中でやりたいなって」
秋田の観客から地元チームへと投げかけられる声援は心強く、そういった面でも秋田の歓声は一番だと言い切る。
「それがあるからこそ、頑張ろうって思えるんです。最初は『期待されてる、やばい』みたいな感覚が自分の中にもあったんですけど、いざ試合になってみると、その声援が後押しになって、嬉しかったんです」
Wリーグの厳しさを痛感した昨シーズン。今ほしいものは「スピード」だそうだ。ひとつの武器だけでは通用しないと実感したからこそ、新たな武器を手に入れるべく、トレーニングを重ねている。
今シーズン、ホーム戦の歓声の中心には、きっと髙野選手がいる。もっと秋田で、もっと輝く。